1.行政組織の基礎概念




①行政主体と行政機関

行政主体: 行政を行う権利と義務の主体

  • 主体の例:
    ・公共組合(例:土地区画整理組合)
    ・特殊法人(例:日本中央競馬会)
    ・独立行政法人(例:大学入試センター)
  • 独立行政法人:
    1999年:中央省庁党改革関連法による
    ・国の行政組織のスリム化と行政業務の効率的運用を計るため
    ・国の行政組織の一部として導入
    ・設置は個別法に基づく
    ・独立行政法人通則法: 組織、運営等の共通原則を定めたもの

行政機関の種類: 行政主体が実際に活動する際の手足

  • 機関の例:
    ・行政庁: 行政主体の法律上の意思決定を行い外部に表示する権限を有する機関
    (例)独任制: 各省大臣、地方公共団体の長
    (例)合議制: 内閣、教育委員会
    (例)運転免許の付与: 都道府県公安委員会(道路交通法)
    ・補助機関: 行政庁の意思決定の行使を補助する機関
    (例)副大臣、事務次官、副知事、副市町村長、職員一般
    ・参与機関: 行政庁を拘束するもの
    (例)電波監視審議会
    (例)検察官適格審査会
    ・諮問機関: 行政庁を拘束しないもの
    (例)中央公害対策審議会、地方制度調査会
    ・執行機関: 市民に対して実力を行使する権限を有する機関
    (例)警察官、消防職員等
    ・監査機関: 行政機関の事務処理において監査を行う
    (例)会計監査院、監査委員

②行政機関相互の関係

(1)指揮監督関係

  • 監視権:
    上級行政機関が、下級行政機関の職務を把握する
    報告を求めたり、帳簿書類を閲覧したり、事務執行の実際を視察する権限
  • 許認可権限:
    下級行政機関がある活動を行おうとする際、上級行政機関が承認を与える権限
    <判例|成田新幹線事件(大臣が認可した公団の申請における取消訴訟)>
    行政機関が 市民に行う行認可とは異なり、行政内部関係の監督手段としての承認
    →行政内部の許認可を市民は取消訴訟を提起して争うことはできないと解してる
  • 訓令権:
    上級行政機関が、下級行政機関に対してその権限行使を指図する権限
    この命令を「訓令」といい、書面の形式にしたものを「通達」という
    法律に特別の根拠がなければ「代執行権」は認められない
    →法律上付与された下級行政機関の権限を奪うことになるから
    行政内部に発せられ、行政機関としての意思を拘束する
    →違法である場合でも訴訟で争うことはできない
    その地位にある公務員が退いても、訓令の効力は維持される
    →後任の公務員はこれに従わなければならない
  • 職務命令:
    行政機関の地位を占めている公務員に発する
    (例)公務員に対する出張命令は、公務員が地位を退けば効力を失う
  • 取消・停止権
    違法又は不当な下級行政機関の活動を取消・停止できる権限を有する
    ・通説: 法律の根拠は不要
    ・法律の根拠が必要と言う見解の主張: 代執行に等しい、行政活動の相手方市民に影響を及ぼす
  • 主管権限争議決定権
    行政機関相互間での権限に関する争いを上級行政庁が決定する権限
    (例)主任大臣間での権限争議を、内閣総理大臣が閣議にかけて裁決する(内7条)

(2)行政機関の協働

行政機関相互の関係には縦の関係以外に、事務の性質上、ある権限行使が複数の行政機関の権限に関係する場合等、対等な横の関係も存在する。

  • 協議
    (例)国土交通大臣は河川専用許可の際、関係行政機関の長と協議せねばならない
  • 権限行使の勧告
    (例)都道府県知事は自動車排気ガスによる大気汚染が環境省令で定める限度を超える場合は都道府県公安委員会に必要な処置を講じるように要請することができる

 ③権限の委任と代理

権限の委任

  • 権限の一部を他の行政機関に委任し行わせる
  • 受任行政庁は自己の権限として自己の名と責任において権限を行使する
  • 機関相互間に上下関係の他、上下関係でなく指揮監督関係が創設された場合もある
  • 権限の委任=法律上定められた権限の所在の変更
    ・法律の明示の根拠と公示が必要
    ・権限の一部についてのみ認められる
    (全部委任は機関に権限を割り当てた法律の趣旨を没却するものであり許されない)
  • 代表例: 国家公務員の任免権限の委任

権限の代理

委任と異なり、権限の全部又は一部を他の機関が行使することで、法効果は被代理機関の行為として生じる。

  1. 授権代理
    ・授権により代理関係が生じる
    ・権限が代理機関に移動しないから法律の根拠は必要ない
    ・法律の明文規定が置かれることもある(例:地自153条1:長の事務の補助機関への臨時代理)
    ※実際には授権代理はほとんど行われていない
  2. 法定代理:
    ・授権ではなく法定事実の発生(事故や病気等)によって生じる代理
    ・狭義の法定代理: 既に法定されている機関間で、法定事実の発生により代理関係が生じる法定代理
    (例)長に事故があった場合の副知事の職務の代理
    ・講義の法定代理: 法定事実の発生後に、指定行為によって初めて生じる指定代理
    (例)副知事や助役に事故がある時や欠けた時、長が指定する吏員による職務代行
    ※指定行為は、法定事実の発生以前に予めなされる場合もある

専決・代決

  • 専決
    法律上権限を有する行政機関が補助機関に最終的な決定権を委ねる
    ・行政実務上、常時行われている
  • 代決
    ・当該行政機関や専決者不在の場合、一時的下級補助機関が決裁を行うこと
    ・対外的には、権限を要する機関の行為としての効果を生じる
    内部の事務処理方法なので法律の根拠は必要ない
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