概要
①地方自治の保障
日本の地方自治は日本国憲法によって保障されている。
- 住民自治:
地域住民が( )に基づいて地域の事務をする《詳細》
自らの意思《詳細を隠す》
- 団体自治:
国から独立した地域団体が、他の団体の干渉を受けずその団体の責任において事務をする
憲法第92条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、( )に基いて、法律でこれを定める。
《詳細》
地方自治の本旨《詳細を隠す》
②地方公共団体の種類
市町村
- 住民の生活に直接関わる行政を担当
- 基礎的な地方公共団体
- 市は、( )人以上という一定の要件が必要
《詳細》
5万人《詳細を隠す》
- 指定都市、中核市、特例市などが存在する
都道府県
- 市町村及び特別区を包括する広域の地方公共団体
- 都: 市と県の機能を併せ持ち、特別区を有する
- 道: 警察組織についての特例(方面本部等)があり、地域開発の為に国土交通省に北海道開発局を設置
- 府、県: 沿革上の区別による呼称の差以外、実質的な区別はない
市町村と都道府県の関係
- 旧来:( )関係・( )関係
《詳細》
上下関係・監督関係《詳細を隠す》
現在:( )関係(都道府県は包括する広域のであり調整的機能を有する)
《詳細》
対等関係《詳細を隠す》
・市町村の配置統合について、関係市町村からの申請に都道府県議会議決で決定できる
・市町村及び特別区は都道府県の条例に違反できず、違反した場合は無効 - ・特別区: 後述
・地方公共団体の組合: 後述
・財産区: 森林や温泉などの財産管理等のために設置される団体
・地方開発事業団: 道路、港湾等の施設の建設を地方公共団体が共同して行う団体
特別区
- 東京都の23区のみで、独立の法人格を有する行政主体
- 当初、区長は直接公選制
↓
区議会が都知事の同意を得て任命する区長選任性
<判例|特別区は憲法上の地方公共団体ではない>
・東京都という市の性格を併有した独立地方公共団体の一部
↓
1973年地方自治法改正にて直接公選制が復活
地方自治法第283条 (市に関する規定の適用)
- この法律又は政令で特別の定めをするものを除くほか、第二編及び第四編中市に関する規定は、特別区にこれを適用する。
- 他の法令の市に関する規定中法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされている事務で第二百八十一条第二項の規定により特別区が処理することとされているものに関するものは、特別区にこれを適用する。
- 前項の場合において、都と特別区又は特別区相互の間の調整上他の法令の市に関する規定をそのまま特別区に適用しがたいときは、政令で特別の定めをすることができる。
第281条の2(都と特別区との役割分担の原則)
- 都は、特別区の存する区域において、特別区を包括する広域の地方公共団体として、第2条第5項において都道府県が処理するものとされている事務及び特別区に関する連絡調整に関する事務のほか、同条第3項において市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理するものとする。
- 特別区は、基礎的な地方公共団体として、前項において特別区の存する区域を通じて都が一体的に処理するものとされているものを除き、一般的に、第2条第3項において( )が処理するものとされている事務を処理するものとする。
《詳細》
市町村《詳細を隠す》
- 都及び特別区は、その事務を処理するに当たつては、相互に競合しないようにしなければならない。
地方公共団体の組合
- 複数の地方公共団体からなる、独立の法人格を有する行政主体
- 一部事務組合: (例)消防組合、病院組合
- 広域連合: (例)介護保険、廃棄物処理
- 全部事務組合: 現在例なし
- 役場事務組合: 現在例なし
③地方公共団体の事務
- [従来] 公共事務、団体委任事務、行政事務、(国の指揮監督権下の)機関委任事務
↓
[現在] 自治事務、法定受託事務 のみ
自治事務
- 地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの
(控除的な定義で、積極的な定義は困難) - 必要事務: 法律またはこれに基づく法令により実施することが義務付けられている
(例) 一般廃棄物処理施設の設置許可、介護保険の実施等 - 随意事務: 実施が自主的判断に委ねられている
(例) 学校、病院、公園の設置、他広範囲にわたる
法定受託事務
- 第一号法定受託事務:
地方分権推進の観点から、できる限り新設しないことと、適宜適切な見直しを行うことが定められている。
④地方公共団体の自治立法権
憲法94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、( )することができる。
《詳細》
法律の範囲内で条例を制定《詳細を隠す》
地方自治法15条
- 普通地方公共団体の( )は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、( )を制定することができる。
《詳細》
長、規則《詳細を隠す》
- 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の( )を科する旨の規定を設けることができる。
《詳細》
過料《詳細を隠す》
第138条の4
- 普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く。
- 普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。
- 普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。
条例
- 地方公共団体の事務
・地域における事務
・法律又はこれに基づく政令により処理することとされてる事務 - 地方公共団体の条例制定権
・法令に反しない限り地方公共団体の事務に関し条例を制定できる
・自治事務に関して可
・法定受託事務に関して可 - 条例制定項目
・住民に義務を課し、又は権利を制限する場合
・公の施設の設置・管理・廃止について
・刑罰、過料(条例の実行性担保目的) - かつての条例制定の限界
法律先占論: 法律が既に規制している領域については同一目的の条例は不可 - 今日の条例制定の限界
・最大限規制立法 (法律が全国一律の均一内容の規制を規定している場合)
法律より厳しい規制は許されない
・最小限規制立法 (法律が全国の最低基準を規定しているのに過ぎない場合)
法律より厳しい規制が許される
(例)大気汚染4条、水質汚濁3条3項
規則
- 地方公共団体の長の規則制定権
・法令に反しない限り
・その権限に関する事務に関し
・(例) 公の施設の管理 - 規則の種類
・条例を施行するために制定される規則 (=施行規則)
・条例の委任に基づいて制定される規則 - 条例との優劣
・原則: 優劣はないと考えられる
・施行規則や条例の委任に基づく規則: 条例が優位 - 各種行政委員会の規則制定権
・個別法に基づいて規則制定権を有する
(例) 地方教育行政方14条に基づく教育委員会規則
(例) 地方自治法138条の4第2項 - 規則違反に対する規定
違反行為に関して5万円以下の過料を科す旨の規定を置くことができる
⑤地方公共団体の組織
(1)基本原理
首長主義
- 直接公選→ 直接住民に対して責任を負う→ 首長主義
- 長と議会は対等の関係→ 力の均衡を保つ→ 地方行政の安定
・議会による長の不信任議決→ ←長の議会解散権
※議院内閣制に類似する制度で、相互に完全に独立しているわけではない
画一主義
- 地方公共団体は組織法定主義により画一的に規定されている(法定)
・一定の筆致行政機関
・議会の委員会(種類と数) - 一定の範囲で認められている自治組織権
・議会の議員定数
・副知事の設置
・助役の設置 など
執行機関の多元主義
- 長以外に政治的中立の確保や専門技術的判断の必要性から、職務上独立した多元的な執行機関が置かれる
・委員会
・委員 - 例
・教育委員会
・選挙管理委員会
・人事委員会(又は公平委員会)
・監査委員
※公平委員会の人事委員会との違い:
人事委員会と異なり、職員の競争試験・選考の実施、研修その他の人事行政全般の調査・企画・立案等の権限はなく、人事機関及び職員に関する条例の制定又は改廃に関して、議会及び長に意見を申し出る権限も有していない。
ただし、条例で定めるところにより、公平委員会が、地公法第8条第2項各号に掲げる事務、職員の競争試験及び選考、これらに関する事務を行うこととすることができる。(地公法第9条第1項)
(2)地方公共団体の機関
議事機関
- 直接選挙での議会がおかれ、任期は4年
- 主な権限(議決権)
・条例の制定改廃
・予算の決定
・決算の承認 など - 行政的意思決定の権限
・重要な契約の締結
・公の施設の独占的利用権の付与 など
執行機関
- 都道府県知事、市町村長、(任期4年)→ 住人の必要なし(広く人材を集める意味)
・統括、代表権
・事務の管理、執行権
・区域内の公共団体の総合調整の為の指揮、監督権
・地方自治法に列挙された主な担当事務(概括例示に過ぎない)
議案提出、予算の調製と執行、地方税の賦課徴収等
・ 他の執行機関に属しない限り全ての地方公共団体の事務は長の担任事務 - 委員会(合議体)、委員(独任制)
・執行機関法定主義
・地方自治法での権限例
選挙管理委員会、監査委員 など
・個別法での例
土地収用法に基づく収用委員会、警察法に基づく公安に委員会 など - 執行機関法定主義:条例で法定外の執行機関を設置することはできない。
長と議会の関係
- 地方自治法 = 首長主義
長と議会は相互に独立してそれぞれん職務を担当
→ 両者の権限行使の抑制、均衡、調和を保つことが必要
再議制度(地方自治法)
- 長が議会に条例や予算の議決に関して再議を求める制度
・異議がある場合
・執行が不当な場合 - 種類
・一般的再議: 任意的
・特別敵再議: 義務的
不信任議決と解散権
- 議会→ 長: 不信任議決を行うことができる
※議員数の2/3以上出席+3/4以上の同意 - 長→ 議会: 議会を解散することができる
※議長から不信任議決の通知を受けてから10日以内(解散しなければ失職) - 解散後、初めての議会で不信任議決時は再度解散できず失職
※議員数の2/3以上の出席+半数以上の同意
長の専決処分
- 議会に代わって意思決定を行うこと
1) 議会が成立しないとき (議決すべき事件を議決しない)
※処分したことを次の議会に報告し承認が必要
2) 議会を招集する暇が無いとき (特に緊急を要するため)
※処分したことを次の議会に報告し承認が必要
3) 議会の委任がある場合 (軽易な事項で議決により特に指定したもの)
※事後に議会への報告で足りる
(3)住民の権利
選挙権と被選挙権
- 選挙権(議員・長)
引き続き3ヶ月以上市区町村に住所を有する者 - 被選挙権
・都道府県、市区町村の議会議員: それぞれの選挙権を有する25歳以上
・ 都道府県知事 30歳以上(住所要件なし)
・市区町村 25歳以上(住所要件なし) - <判例|選挙権の保証(最平7.2.28)>
・外国人に地方公共団体の選挙権を湯よすべきと言う意見が有力になりつつある
・最高裁は選挙権の保障は日本国民のみを対象とした
直接請求
- 地方自治法
・条例の制定改廃請求: 住民の1/50
・事務の監査請求: 住民の1/50
・議会の解散請求: 住民の1/3
・議員、長、主要公務員の解職請求: 住民の1/3 - 市町村の合併の特例に関する法律
・合併協議会設置の請求: 選挙人名簿総数の1/50→ 市町村長
(従来) 設置は議会の最終判断に委ねられていた→ 否決が多かった
↓
[1999年法改正]
1) 請求が議会に否決
↓
2) 首長が住民請求することができる
↓
3) 首長が請求しないとき→ 有権者の1/6→ 選挙管理委員会に
↓
4) 住民投票実施: 過半数で議決があったものとみなす
※実際の設置には全ての関係市町村の議決が必要
住民投票
- 直接請求時(地方自治法)
・議会解散
・議員・長の解職請求 - 憲法の要請
・国会が地方自治特別法を制定する場合
(例)広島平和記念都市建設法 - 住民投票条例: 地方公共団体で法制度以外として
・原子力発電所の建設
・地域の建設プロジェクト事業実施の可否
・常設型の住民投票制度(案件を限定しない)
(例)箕面市市民参加条例
※長は決定につき住民投票の結果を尊重又は参考にする範囲(諮問型住民投票制度が通例)
(理由)住民投票の結果が長を拘束することになれば、憲法が予定している間接民主制に反するおそれがあるから。
住民監査請求・住民訴訟
- 住民監査請求
誰が: 住民は(国籍条件不問)
いつ: 不法・不当な抗菌出があると認められるとき
誰に: 監査委員に対し
何をする: 当該違法・不当な行為の防止、是正、損害賠償等の処置を行うことを請求できる
それから: 監査委員は監査結果、請求に理由があると認めるときは
どうする: 執行機関又は職院に機関を示して必要な処置を講じることを勧告する
そして: 請求住民に対して請求の日から60日以内に監査結果を通知しなければならない - 住民訴訟
監査結果に住民が不満な場合、住民訴訟を提起できる