
概要
①行政の規範定立の概念と必要性
- 行政は法律による行政の原理に基づいて法律を執行することが任務
・法規命令: 市民の権利義務に影響を与える
・行政規則: 法規たる性質を有しない
※厳密には、法規命令のみが行政機関による実質的な意味での立法行為 - 議会が全ての将来の状況を予想して法律を制定することは困難
→ 法条の形式で一般的・抽象的な法規判を定立することがある
・議会は、複雑専門化した行政に対応できる十分な専門技術的な判断能力を有していない
・状況に応じて柔軟に対応すべき事項や、細部的・技術的時効は行政判断に委ねることが妥当
②法規命令の種類と形式
委任命令
( )の委任により市民の権利義務を定めるもの
《詳細》
法律《詳細を隠す》
(例)
《詳細》
国家公務員法と人事院規則の関係
- 国家公務員法102条1項に基づいて制定された人事院規則14-7
- 国家公務員の政治的行為の制限の内容を定めている (行政立法)
- 法律の根拠が必要
《詳細を隠す》
執行命令
市民の( )の内容を実現するための具体的な実施細目を定めたもの
《詳細》
権利義務
法律で申請・届出が義務付けられている場合様式を定めたもの
《詳細を隠す》
(例)
《詳細》
「施行令」とか「施行規則」といった名称
- 市民の権利義務の内容を定めるものではないが、行政立法
- 法律の根拠は不要
《詳細を隠す》
- 法規命令の種類
- 国の機関
- 内閣: 政令
- 内閣総理大臣: 内閣府令
- 各主任大臣: 省令
- 各外局の長: (外局)規則
- 会計検査院: 会計検査院規則
- 地方公共団体
- 長、各委員会: 規則(地自15条1、警38条など)
- 国の機関
- 告示: 行政機関が、決定事項やその他の事項を広く一般に公示する方式(法規命令や、行政規則など様々な法効果がある)
- 生活保護基準
- 都市計画決定
- 学習指導要領 <判例|伝習慣高校事件>
※文部大臣が告示として基準を定めた教育及び方法は法規制としての性質を有する
委任立法の根拠と限界
- 法律による行政の原理 + 実際の必要性 + 立法技術上の要請
↓
条理上、当然に承認されるべきもの(憲法73条6号)
↓
委任の目的、対象、範囲を明確にしていない包括的な委任は許されない
※猿払事件は白紙委任ではないかとの批判が強く違憲論が有力
(国家公務員の政治的行為の制限の内容を人事院規則に委ねていること) - 立法者に課せられた限界: 包括的委任の禁止
- 委任命令を制定する行政機関の限界: (下記)委任立法を違法であるとした判例
・強制買収農地の旧所有者への売払いの認定基準(S46.1.20)
・在監者の接見の自由の制限(H3.7.9)
・父から認知された婚姻外胎児自動の児童扶養手当(H14.1.31) - 委任立法の適法性の判例
・銃砲刀類登録規則-日本刀に制限(H2.2.2)
③行政規則
- 性質
・行政機関の定立する定めで、法規たる性質を有しない
・法律の根拠なく自由に定めることができる
・裁判規範性がない - 形式
・省令
・規則
・告示:「告示とという形式のもの」には、行政規則以外に法規たる性質を有するものがある
・訓令
・通達
・裁量基準
・要綱
・営造物の利用規則
など
通達
- 性質
・訓令を書面の形式にしたもので、性質も訓令と同様
・行政内部的規範で市民に対して法的拘束力を持たない
・法律の明文の根拠なく、行政機関は訓令と共に通達を発する権限を有する
(この権限は、国家行政組織法には規定されている)
・公示は効力要件ではない(公示なく効力を有する)
(公示は官報に掲載されることがあり、また秘密通達と言うのもある) - 機能
・通達によって法律の解釈や行政の方針が変更されることが多い
→ 市民生活に重大な影響を及ぼしている
→ 「法律による行政」でなく「通達による行政」と揶揄されている
→ 法的に無意味であるとされた通達に、何らかの外部的効果を認める必要が出てきた
→ 最高裁は、通達自体を訴訟で争えず、裁判規範性を有することもないとしている
→ 法律解釈として社会的に定着した場合、尊重して法的安定性を図るべきと言われる - 最高裁での通達における言及
・通達それ自体を訴訟であら即ことはできない(s43.12.24|墓地)
・通達が裁判規範性を有することは無い(s33.3.28|パチンコ) - 例外の考察<大阪地裁|s45.5.12>
ある種の処分が通達にしたがって大量かつ画一的に行われている場合、同種の処分がひとり通達に違反したときは、通達に法規に準じた機能を認め、その処分は平等原則に違反する違法な処分として取り扱うことも許されるであろう。 - 例外の考察<東京地裁|s46.11.8>
建築許可に対してなされる消防庁の同意→行政機関相互間の行為であるから、処分ではない。
→通達によって現実に行政過程が展開することはよくある
→私人に不利益に行政過程が進行し、その通達を争わせなければ他に救済の方法がない場合
→最高裁判所の定式をそのまま適用させてよいかどうか問題
東京地判昭和46.11.8行集22.11=12.1785
「通達であってもその内容が国民の具体的な権利・義務ないしは法律上の利益に重大なかかわりをもち、かつ、その影響が単に行政組織の内部関係にとどまらず外部にも及び、国民の具体的な権利・義務ないしは法律上の利益に変動をきたし、通達そのものを争わせなければその権利救済を全からしめることができないような特殊例外的な場合には、行政訴訟の制度が国民の権利救済のための制度であることに鑑みれば、通達を単に行政組織の内部的規律としてのみ扱い、行政訴訟の対象となしえないものとすることは妥当ではなく、むしろ通達によって具体的な不利益を受ける国民から通達そのものを訴訟の対象として取消を求めることも許されると解するのが相当である」
このような特殊例外的な場合には、通達を取消訴訟の対象とすることができる。
●通達そのものを訴訟で争わなければ、市民の権利救済が全うできないような特段の事情がある場合には、通達それ自体に対する訴訟の提起も認められるべきである。
裁量基準
- <個人タクシー事件|最s46.10.28>
多数のものから少数の特定のものを選択して免許を付与する場合に、法令の抽象的な基準だけでは、その判断に行政機関の恣意が介入し、不公正な判断に陥ってしまうことになりかねない。 - 市民に予測可能性を付与する為に、法律上の抽象的な基準を具体化した審査基準を設定し公表する必要がある。
- 基準適用の上で必要事項について、申請人に主張と証拠の提出の機会を与えなければならない。
・行政手続法5条: 審査基準
・行政手続法12条: 処分の基準 - 裁量基準は行政内部の規範にすぎず、裁判規範ではなく、裁判所はこれに拘束されないが、平等原則に反するような拒否処分や不利益処分を訴訟で争う場合、裁判所は処分の適法性を審理することになり、実質的にほうきに近い効果を発揮することになる。
→ 内部行為の法規か・外部化の現象
要綱
- 国や地方自治体において内部的に定められている規範
- 裁量基準と同様、法的拘束力を有する性質のものではない
- <例>資金助成要綱 (地方公共団体が中小企業等に補助金を給付する場合の基準)
→ 給付の不平等が問題になった場合、内部基準が外部化され、要綱が裁判規範になる
→ 法規範でなく補助金請求権は無いが、要綱違反の場合、法的拘束力を認め救済されるべき - <例>行政指導要綱
→ 地方公共団体の住宅開発指導要綱(秩序ある街づくりの観点から宅地開発業者への行政指導)
→ 法的拘束力の無い要綱の行政指導に従わないものについて制裁処置を定めている場合が多い
※「法律による行政の原理」から問題があるとの批判がある
営造物利用規則
- 国立大学、図書館、病院などの公共施設の利用に関する規則
- これまで:
・行政規則、特別権力関係→ 内部者は法律の根拠なしに利用を制限できる - 今日:
・特別権力関係の否定→ 基本的に非権力的な契約関係(利用者の権利義務に関わるもの) - 営造物の利用に関する基本的事項は法律時効であると解する学説も存在する
④行政の規範定立に対する法的統制
- 個別法で審議会の諮問を要求
食品衛生法 第7条 厚生労働大臣は、一般に飲食に供されることがなかつた物であつて人の健康を損なうおそれがない旨の確証がないもの又はこれを含む物が新たに食品として販売され、又は販売されることとなつた場合において、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、それらの物を食品として販売することを禁止することができる。 - 個別法で公聴会を要求
労働基準法 第113条(命令の制定)この法律に基いて発する命令は、その草案について、公聴会で労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定する。 - 行政の規範定立は、国会の開かれた立法に比べ、一方的で閉鎖的
→ 民意を反映する手続の整備が必要
→ 1999年 パブリックコメント導入を閣議決定
→ 2005年 行政手続法改正に際して「意見公募手続」として法制化 - 行政の定立した規範
・直接裁判の対称にする訴訟形式は存在しない
→ 直接市民に不利益を及ぼすものがある
→ 定立された規範そのものを裁判の対象として認めるべきであると思われる
→ 最高裁は行政処分概念の拡大には消極的
→ 地法審の判決には行政の規範定立行為に行政処分製を認めたものもある
<東京地裁|s40.4.22>(事案)
*健康保険法による「療養に要する費用の額の算定方法」の告示(値上げ)に処分性を認める
(判旨)
「行政庁の行為が一面において一般的、抽象的な定めを内容とし将来の不特定多数の人をも適用対象とするため法規制定行為=立法行為の性質を有するものとみられるものであつても、他面において右行為が、これに基づく行政庁の他の処分を待つことなく、直接に国民の具体的な権利義務ないし法律上の利益に法律的変動をひき起こす場合には、当該行政庁の行為も、その限りにおいては、特定人の具体的権利義務ないし法律上の利益に直接関係するにすぎない行政行為と何ら異なるところはないのであるから、取消訴訟の対象となりうるものと解するのが相当である」。