最平07.09.19|転用物訴権

Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕業務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない

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契約上の給付が、契約の相手方のみならず、第三者の利益になった場合において、相手方から当該給付の対価を得られなかった給付者が、当該第三者に利得の返還を請求することを転用物訴権という。

転用物訴権におけるかつての判例は、相手方が無資力であり、その債権が無価値である場合、利益を受けた第三者の不当利得を認めて返還請求できるという趣旨の広く許容する立場をとったが(最判昭和45年7月16日)、その後実質的な判例変更をし、第三者が利益を受けたというには、契約全体から見て、当該第三者が対価関係なしに利益を受けたときに限られるとし、転用物訴権における不当利得の請求について一定の制限をしている(最判平成7年9月19日)。

本肢の事案は、後者の判例の事案に沿うものであり、Aの請求を認めると、Bに実質的な二重の負担(権利金と修繕費)を強いる結果になるため、返還請求ができないとされる。
したがって、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

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他の例としては、BがCに対して、権利金を払わない代わりに、Bが当該家屋の修繕義務を負うとする旨の契約をしたため、BがAに工事を依頼したときである。
ようするに、Cが本来負うべき修繕義務とBが負うべき権利金支払義務を交換したと言うことで、それが対価関係となっていた。
なので、修繕債権は、不当利得ではないと判示された。

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