高平15.05.21|O157 食中毒損害賠償訴訟

【裁判例】
O157 食中毒損害賠償訴訟

(事案の概要)
平成 8 年夏に大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157 による集団食中毒に関し、厚生省(当時)から原因食材の可能性を指摘されたかいわれ大根生産農家等が、「根拠のない公表により売上げが激減した」として、国に賠償を求め、東京と大阪で二つの訴訟を提起(大阪の原告は原因者の可能性を指摘された生産農家であり、東京の原告は風評被害を受けたとするかいわれ協会と第三者生産農家)。

(訴訟の経緯)
東京地判平成 13 年 5 月 30 日では国の賠償責任が否定された。
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控訴審である東京判平成 15 年 5 月 21 日では国の賠償責任が認められた

大阪判平成 14 年 3 月 15 日及び控訴審である大阪判平成 16 年 2 月 19 日でも国の賠償責任が認められた(各高裁判決に対しては国が最高裁に上告受理の申立を行ったが、いずれも不受理が決定された。)。

○東京高判平成 15 年 5 月 21 日(判例時報 1835 号 85 頁)
「…本件において、厚生大臣が、記者会見に際し、一般消費者及び食品関係者に『何について』注意を喚起し、これに基づき『どのような行動』を期待し、『食中毒の拡大、再発の防止を図る』目的を達しようとしたのかについて、所管する行政庁としての判断及び意見を明示したと認めることはできない。かえって、厚生大臣は、中間報告においては、貝割れ大根を原因食材と断定するに至らないにもかかわらず、記者会見を通じ、前記のような中間報告の曖昧な内容をそのまま公表し、かえって貝割れ大根が原因食材であると疑われているとの誤解を広く生じさせ、これにより、貝割れ大根そのものについて、O-157による汚染の疑いという、食品にとっては致命的な市場における評価の毀損を招き、全国の小売店が貝割れ大根を店頭から撤去し、注文を撤回するに至らせたと認められる。

厚生大臣によるこのような中間報告の公表により、貝割れ大根の生産及び販売に従事する控訴人業者ら並びに同業者らを構成員とし、貝割れ大根の生産及び販売について利害関係を有すると認められる控訴人協会の事業が困難に陥ることは、容易に
予測することができたというべきで、食材の公表に伴う貝割れ大根の生産及び販売等に対する悪影響について農林水産省も懸念を表明していた(原判決一五三頁<同五五頁四段八行目から二二行目まで>)のであり、それにもかかわらず、上記方法によりされた中間報告の公表は、違法であり、被控訴人は、国家賠償法一条一項に基づく責任を免れない。」

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