判示事項
詐害行為の受益者と取消債権者の債権の消滅時効の援用
裁判要旨
詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権の消滅時効を援用することができる。
詐害行為の受益者は、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、
その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば利益喪失を免れることができる地位にあるから、
債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、債権について消滅時効を援用することができる。
事の次第
Xは、Aに対して、保証債務履行請求権と立替払により生じた求償債権を有していた。
保証債務の主債務は、株式会社B社(代取A)がXに対して負っていた貨金債務等であった。
多額の債務を負うAは、自分の内妻であるYに、他の債権者を害することを知りながら、不動産を贈与した。
Xは、贈与が詐害行為に該当するとして、その取消及び移転登記の抹消を求めた。
受益者Yは、抗弁として、詐害行為取消権の被保全債権について消滅時効を主張した。
求償債権については10年の消滅時効を、保証債務履行請求権については、Xの主債務者(B社)に対する商事債権について5年の消滅時効を援用した。