概要
行政事件訴訟法 第7条(この法律に定めがない事項)
行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、( )による。
《詳細》
民事訴訟の例《詳細を隠す》
行政事件訴訟では、行政事件訴訟法第7条により、民事訴訟にならって当事者主義的な審理手続がとられてきた。
平成16年に、釈明処分の特則として職権主義的要素を取り入れる改正がなされた。
- 民事訴訟法上の釈明処分
対象となる文書は、訴訟において引用した文書で当事者の所持するものに限られている。
行政事件訴訟法 第23条の2(釈明処分の特則)
- 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
- 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料(次項に規定する審査請求に係る事件の記録を除く。)であって当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
- 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であって当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
- 裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があったときは、次に掲げる処分をすることができる。
- 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、当該審査請求に係る事件の記録であって当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
- 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であって当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
行政事件訴訟法で規定を設け対象範囲を広げた
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、被告である国又は公共団体に所属する行政庁に対して資料の提出を求め、所属しない行政庁へ資料送付の依頼をすることができるとしている。
民事訴訟法
- 釈明処分
民事訴訟手続において、裁判所が、口頭弁論で釈明権を行使するのとは別に、その準備又は補充として事実関係や法律関係を明確にするためにする処分(民事訴訟法151条)。
民事訴訟法上の釈明処分では、対象文書は、訴訟において引用した文書で当事者の所持するものに限られている。 - 民事訴訟一般の釈明処分に対する特則
- 裁判所が、行政庁に対し下記ができることになった(23条の2)
- 処分又は裁決の理由を明らかにする資料の提出を求め又は送付を嘱託すること、
- 処分についての審査請求に係る事件の記録の提出を求め又は送付を嘱託すること、
- 当事者の引用、所持は要件とならず、裁判所は、被告行政主体に属する行政庁以外の行政庁に対して、送付の嘱託をすることもできる。
- 裁判所が、行政庁に対し下記ができることになった(23条の2)
- 釈明処分
- 行政庁の側に資料・記録について提出・送付の法的義務が課されるわけではない。
- 行政庁の側が提出・送付を拒んでも制裁が科されることはない。
- 行政庁側が正当な理由もなく資料・記録の提出・送付を拒むような場合には裁判官の心証形成の面で不利益な取扱いを受けることがありえ、場合によっては、文書提出命令に進むことがありうる。
釈明処分と釈明権の比較
- 釈明処分とは、訴訟関係を明瞭にするために裁判所が行う適当な処分。
- 釈明権とは、訴訟関係を明瞭にするために当事者に対して働きかける裁判所の権能。
共通点
- 訴訟関係を明瞭にするためという目的
- 裁判所が行う
異なる点
- 釈明処分:
裁判所自身の行為によって訴訟関係を明瞭にする手段 - 釈明権:
裁判所が主張・立証などの訴訟行為を当事者に促す手段
民事訴訟法 第151条(釈明処分)
- 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
- 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
- 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
- 訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
- 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
- 検証をし、又は鑑定を命ずること。
- 調査を嘱託すること。
- 前項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。
民事訴訟法 第149条(釈明権等)
- 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
- 陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
- 当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
- 裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第1項又は第2項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。