最平07.06.23|担保保存義務免除特約

代位権者に対する債権者の義務

SはYから2億円を借り受けるに際して、自己所有の甲不動産(時価1億5000円)と物上保証人X所有の乙不動産(時価1億円)に抵当権を設定した。その後、SはYと交渉し、甲不動産を任意処分による一部弁済を行うこととした。この約定に沿ってYは甲不動産の抵当権を解除し、Sは甲不動産をDに売却して代金1億円をYに弁済した。そこで、XがYに対して、甲不動産の抵当権解除行為は担保保存義務違反に当たるので、自分は免責されるとして乙不動産の抵当権の抹消を求めた。

①XY間に担保保存義務免除特約がある場合とない場合で結論が異なるか。
②抵当権設定後、Xが乙不動産をZに譲渡していた場合、Zとの関係では担保保存義務やその免除特約の効力はどうなるか。

  • 任意代位の場合の
    ・通知義務(499条2項)
    ・附記登記協力義務(501条但書1号参照)
    ・債権証書・担保等の交付義務(503条)
    ・担保保存義務(504条)
  • 債権者が故意または懈怠によって担保を喪失・減少した場合には、法定代位権者は償還不能の限度で免責される(例:C債権者Gが物上保証人Bの抵当権を解除し、S・A・Bがいずれも無資力になった場合、XのGに対する保証債務が消滅する。物上保証人が代位権者なら担保権の負担がその限度で消滅)。

※担保保存義務違反が生じる前に登場した第三取得者も義務違反によって免責を受けうる(最判平3年9月3日民集45巻7号1121頁)。

・実務上は銀行の継続的融資業務を妨げるとして嫌われ、「担保保存義務免除特約」が結ばれている。判例は、一般的にはこのような特約も有効であるとする。ただ、担保喪失・減少行為に合理性が欠けるか、代位権者の代位の利益を害することについて故意・重過失がある場合には、信義則違反や権利濫用を理由に特約の効力が主張できない、という例外も認めている(最判平7年6月23日民集49巻6号1737頁)。

・担保保存義務免除特約が有効な場合、問題になった行為以後に現れた第三取得者は、免責の効果が生じていない状態の担保の負担がある物件を取得したことになり、債権者に対し504条による免責の効果を主張できない(前掲判例)。

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