最昭45.06.24|相殺と債権譲渡と弁済期

判示事項

  1. 債権の差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三債務者が反対債権を自働債権とし被差押債権を受働債権としてする相殺の効力
  2. 相殺に関する合意の差押債権者に対する効力

事案

  1. 甲(取引先)乙(銀行)に対して債権(預金債権)を有 している。
  2. 乙(銀行)甲(取引先)に対して債権(貸付金債権)を有している。
  3. 甲(取引先)国税債権者債権(預金債権)を差し押さえた。

裁判要旨

  1. 債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が( )かぎり、( )を問わず、( )さえすれば、第三債務者は( )においても、( )として、被差押債権と相殺することができる。

    《詳細》

    債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は差押後においても、反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。

    《詳細を隠す》

  2. 銀行の貸付債権について、債務者の信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合には、債務者のために存する貸付金の期限の利益を喪失せしめ、同人の銀行に対する預金等の債権につき銀行において期限の利益を放棄し直ちに相殺適状を生ぜしめる旨の合意は、預金等の債権を差し押えた債権者に対しても効力を有する

原審が確定したところによれば、被上告銀行と訴外A工業株式会社(以下訴外会社との間に本件差押前に締結された継続的取引の約定書には、その第9条第一項本文として「左の場合には、債務の全額につき弁済期到来したるものとし、借主(訴外会社)又は保証人の被告銀行(被上告銀行)に対する預金その他の債権と弁済期の到否にかかわらず、任意相殺されても異議がなく、請求次第債務を弁済する」との条項が、そして同項第三号として「借主又は保証人につき、仮処分差押仮差押の申請、支払停止、破産若くは和議の申立てがあつたとき」との条項が存し、被上告銀行は、特約に基づき、本件差押当日現在被上告銀行訴外会社に対して有していた原判示の貸付金債権合計6,106,000円、および同日現在訴外会社被上告銀行に対して有していた原判示の預金等の債権合計6,503,928円の両者について、本来の弁済期未到来の債権については各弁済期が同日到来したものとして、昭和35年3月21日本件第一審の口頭弁論において、上告人に対し、前者を自働債権とし、後者を受働債権として、対当額で相殺する旨の意思表示をしたというのである。

認定の事実によれば、特約は、訴外会社またはその保証人について前記のように信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合においては、被上告銀行の訴外会社に対する貸付金債権について、訴外会社のために存する期限の利益を喪失せしめ、一方、同人らの被上告銀行に対する預金等の債権については、被上告銀行において期限の利益を放棄し、直ちに相殺適状を生ぜしめる旨の合意と解することができるのであつて、かかる合意が契約自由の原則上有効であることは論をまたないから、本件各債権は、遅くとも、差押の時に全部相殺適状が生じたものといわなければならない。

そして、差押の効力に関して先に説示したところからすれば、被上告銀行のした前示相殺の意思表示は、相殺適状が生じた時に遡つて効力を生じ、本件差押にかかる訴外会社の債権は、相殺および原審認定の弁済により、全部消滅に帰したものというべきである。

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